
この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。
\(|z-\alpha|=2\) は「点 \(\alpha\) を中心とする半径 2 の円」。 \(|z|\) は原点からの距離、\(\arg z\) は実軸の正の部分となす角なので、どちらも円の図で考えます。 \(|z|\) の最大は直線 OA 上、偏角の最大は原点から引いた接線の接点。直角三角形ができて、有名角で計算できます。
この回で扱う問題
この問題では、複素数の偏角はすべて 0 以上 \(2\pi\) 未満とする。
\(\alpha=2\sqrt2\,(1+i)\) とし、等式 \(|z-\alpha|=2\) を満たす複素数 \(z\) を考える。
(1) \(z\) の中で絶対値が最大となるものは ア である。
(2) \(z\) の中で偏角が最大となるものを \(\beta\) とおくと、\(\dfrac{\beta}{\alpha}\) の絶対値は イ で、偏角は ウ である。
また、\(\beta=\)エ + オ \(i\) である。ただし、エ、オ は実数である。
さらに、\(\beta\) の偏角は カ である。\(1\le n\le 100\) の範囲で、\(\beta^n\) が実数になる整数 \(n\) は キ 個ある。
(センター試験)
方針 ― 式を図に読みかえる
- \(|z-\alpha|=2\):中心 A\((\alpha)\)、半径 2 の円。まず中心と半径を書き出す。
- \(|z|\):原点 O からの距離 → 円の中心を通る直線 OA で考える。
- \(\arg z\):実軸の正の部分となす角 → 原点から円に引いた接線で考える。
中心 \(\alpha\) を極形式にしておくと、図がすぐ描けます。
\[\alpha=2\sqrt2\,(1+i)=4\left(\cos\frac{\pi}{4}+i\sin\frac{\pi}{4}\right)\]
\(|\alpha|=4\)、\(\arg\alpha=\dfrac{\pi}{4}\) です。
(1) |z| の最大 → 直線 OA 上
原点から一番遠い円周上の点は、直線 OA と円の交点のうち、O から遠いほうの点 P です。
\[|z|=|\alpha|+(\text{半径})\]
\[=4+2=6\]
\[\arg z=\frac{\pi}{4}\]
\[z=6\left(\cos\frac{\pi}{4}+i\sin\frac{\pi}{4}\right)\]
ア:\(3\sqrt2+3\sqrt2\,i\)
(2) 偏角の最大 → 原点からの接線
点 \(z\) を円の上で動かすと、偏角が最大になるのは、原点 O から円に引いた接線の接点 B のとき。この B が \(\beta\) です。
△OAB で、接点では半径と接線が垂直なので \(\angle\mathrm{OBA}=\dfrac{\pi}{2}\)。さらに
\[\mathrm{OA}:\mathrm{AB}=|\alpha|:(\text{半径})=4:2=2:1\]
なので、△OAB は 30°・60°・90° の直角三角形です。
\[\angle\mathrm{AOB}=\frac{\pi}{6}\]
\[|\beta|=\mathrm{OB}=\sqrt3\,\mathrm{AB}=2\sqrt3\]
イ・ウ
\[\left|\frac{\beta}{\alpha}\right|=\frac{|\beta|}{|\alpha|}=\frac{2\sqrt3}{4}=\frac{\sqrt3}{2}\]
\(\dfrac{\beta}{\alpha}=\dfrac{\beta-0}{\alpha-0}\) は「原点を中心に、点 \(\alpha\) を点 \(\beta\) へ動かす」式なので、偏角は \(\angle\mathrm{AOB}\) です。
\[\arg\frac{\beta}{\alpha}=\frac{\pi}{6}\]
イ:\(\dfrac{\sqrt3}{2}\) ウ:\(\dfrac{\pi}{6}\)
エ・オ
\[\beta=\frac{\sqrt3}{2}\left(\cos\frac{\pi}{6}+i\sin\frac{\pi}{6}\right)\alpha\]
\[=\frac{\sqrt3}{2}\left(\frac{\sqrt3}{2}+\frac12 i\right)\cdot2\sqrt2\,(1+i)\]
\[=\frac{3\sqrt2-\sqrt6}{2}+\frac{3\sqrt2+\sqrt6}{2}\,i\]
エ:\(\dfrac{3\sqrt2-\sqrt6}{2}\) オ:\(\dfrac{3\sqrt2+\sqrt6}{2}\)
カ・キ
図より
\[\arg\beta=\frac{\pi}{4}+\frac{\pi}{6}=\frac{5}{12}\pi\quad(75^\circ)\]
板書のように \(\beta=2\sqrt3\,(\cos75^\circ+i\sin75^\circ)\) と書けるので、ド・モアブルの定理から
\[\beta^n=(2\sqrt3)^n\left(\cos\frac{5n}{12}\pi+i\sin\frac{5n}{12}\pi\right)\]
\(\beta^n\) が実数 ⇔ 偏角が \(0,\ \pi,\ 2\pi,\ \cdots\)(\(\pi\) の整数倍)。
\[\frac{5n}{12}\pi=k\pi\quad(k\ \text{は整数})\]
5 と 12 は互いに素なので、\(n\) は 12 の倍数。\(1\le n\le100\) では \(n=12,\ 24,\ \cdots,\ 96\) の 8 個です。
カ:\(\dfrac{5}{12}\pi\) キ:8
つまずきポイント
- \(|z-\alpha|=2\) を円と読めない。 「中心」と「半径」を最初に書き出すと、あとは図の問題です。
- 偏角の最大を計算で探そうとする。 原点から接線を引けば、OA : AB = 2 : 1 の直角三角形で \(\dfrac{\pi}{6}\) が見えます。
- 実数の条件を「偏角が \(2\pi\) の倍数」だけにする。 \(\pi\) のとき(負の実数)も実数です。
要点まとめ
- \(|z-\alpha|=r\) は中心 \(\alpha\)、半径 \(r\) の円。
- \(|z|\) の最大・最小は直線 OA 上(\(|\alpha|\pm r\))。
- 偏角の最大・最小は原点からの接線の接点。直角三角形の辺の比で有名角に。
- \(\beta^n\) が実数 ⇔ \(\arg\beta^n\) が \(\pi\) の整数倍。
