
この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。
\(z+\dfrac1z\) が実数になる \(z\) は、実数か \(|z|=1\) のどちらかです。 「実数 ⇔ 共役と等しい」で式を作る方法、極形式でおく方法、\(z=a+bi\) とおく方法の3通りで確かめます。 どの方法でも、最後は「積が 0」の形に持ちこむのがポイントです。
この回で扱う問題
\(z\) を \(z\ne 0\) である複素数とする。\(z+\dfrac1z\) が実数であるための必要十分条件は、\(z\) が実数であるか \(|z|=1\) であることを示せ。
(改 津田塾大)
方針 ― 3通りの道具
- (解1)\(w\) が実数 \(\iff w=\overline{w}\)。共役をとった式を作り、\(z\overline{z}=|z|^2\) を使う。
- (解2)極形式 \(z=r(\cos\theta+i\sin\theta)\) とおき、虚部 \(=0\)。
- (解3)\(z=a+bi\) とおき、分母を実数化して虚部 \(=0\)。
(解1)実数 ⇔ 共役と等しい
\(z+\dfrac1z\) が実数となるのは
\[z+\frac1z=\overline{z+\frac1z}=\overline{z}+\frac1{\overline{z}}\]
のときです。両辺に \(z\overline{z}=|z|^2\ (\ne 0)\) をかけると
\[|z|^2z+\overline{z}=|z|^2\overline{z}+z\]
すべて左辺に移して、\(|z|^2\) のある項とない項でまとめます。
\[|z|^2(z-\overline{z})-(z-\overline{z})=0\]
\[(z-\overline{z})\left(|z|^2-1\right)=0\]
よって \(z=\overline{z}\)(\(z\) は実数)または \(|z|^2=1\)、つまり \(|z|=1\)。式変形はすべて同値なので、必要十分条件になっています。
(解2)極形式でおく
\(z=r(\cos\theta+i\sin\theta)\ (r\gt 0)\) とおくと、\(\dfrac1z=\dfrac1r\{\cos(-\theta)+i\sin(-\theta)\}\) です。
\[z+\frac1z=\left(r+\frac1r\right)\cos\theta+i\left(r-\frac1r\right)\sin\theta\]
これが実数になるのは、虚部が 0 のとき。
\[\left(r-\frac1r\right)\sin\theta=0\]
- \(r-\dfrac1r=0\) なら \(r^2=1\)、\(r\gt 0\) より \(r=1\)。つまり \(|z|=1\)。
- \(\sin\theta=0\) なら \(z=r\cos\theta\)。つまり \(z\) は実数。
(解3)z = a + bi とおく
\(z=a+bi\)(\(a,\ b\) は実数で、同時には 0 でない)とおきます。分母を実数化すると
\[\frac1{a+bi}=\frac{a-bi}{a^2+b^2}\]
なので、\(z+\dfrac1z\) の虚部は
\[b-\frac{b}{a^2+b^2}=\frac{a^2b+b^3-b}{a^2+b^2}\]
実数になるのは、この分子が 0 のときです。
\[b\left(a^2+b^2-1\right)=0\]
- \(b=0\) なら \(z\) は実数。
- \(a^2+b^2=1\) なら \(|z|=1\)。
つまずきポイント
- 「実数 ⇔ \(w=\overline{w}\)」の共役を一部だけにつける。 \(\overline{\left(\frac1z\right)}=\frac1{\overline{z}}\) まで、和の全体にかける。
- \(z-\overline{z}\) で割ってしまう。 割ると「\(z\) が実数」の場合が消える。くくり出して積 \(=0\) にする。
- 極形式で \(\dfrac1z\) の偏角を \(\theta\) のままにする。 絶対値は \(\dfrac1r\)、偏角は \(-\theta\)。
- 「必要十分」を片方向だけ示す。 同値変形 \(\iff\) でつなげば、両方向が一度に言える。
要点まとめ
- \(w\) が実数 \(\iff w=\overline{w}\)。分母を払うときは \(z\overline{z}=|z|^2\)。
- 極形式なら \(\dfrac1z=\dfrac1r\{\cos(-\theta)+i\sin(-\theta)\}\)。虚部 \(=0\) で考える。
- どの解き方も、最後は「積 \(=0\)」:\((z-\overline{z})(|z|^2-1)=0\)。
- \(|z|=1\) のときは \(\dfrac1z=\overline{z}\) なので、\(z+\dfrac1z=z+\overline{z}\) は実数。
