共テ数学ⅡBC 第2回【第5問】区間推定と仮説検定を正規分布で ― 統計的な推測

この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。

解説動画(音声つき)

標本平均 \(\overline{X}\) は、母集団が何であっても、標本が大きければほぼ正規分布に従います。 平均は母平均 \(m\) のまま、ばらつきは \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) に縮む。この1点から、信頼区間も仮説検定も組み立てられます。 この回は、同じ \(\overline{X}\) の分布を2通りに使う問題です。

この回で扱う問題

K県のA高校の生徒の通学時間を \(X\)(分)とする。母平均を \(m\)、母標準偏差を \(\sigma\) とし、49人を無作為に抽出した標本平均を \(\overline{X}\) とする。49人の通学時間は、平均28.6分、標準偏差4.0分だった。

(1) \(m\) に対する信頼度95%の信頼区間を求めよ。

(2) K県の高校生の通学時間は正規分布に従い、平均30.0分、標準偏差4.0分。28.0分以上32.0分以下の生徒は76600人。K県の高校生の総数を求め、A高校の母平均 \(m\) とK県の平均に差があるかを、有意水準5%で検定せよ(\(\sigma=4.0\) とする)。

方針 ― \(\overline{X}\) の分布を決める

  • 標本の大きさ \(n=49\) が大きいので、\(\overline{X}\) は近似的に平均 \(m\)、標準偏差 \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{49}}=\dfrac{\sigma}{7}\) の正規分布。
  • (1) 母標準偏差 \(\sigma\) は標本の標準偏差 4.0 で代用して、\(\overline{X}\pm 1.96\times\)標準偏差。
  • (2) 前半は、正規分布表で「平均±0.5σ に入る割合」を読む。後半は、帰無仮説のもとで \(Z\) を作り、両側の確率を調べる。

(1) \(\overline{X}\) の分布と信頼区間(ア・イ・ウ〜ク)

\(\overline{X}\) は、平均 \(m\)(ア=⓪)、標準偏差 \(\dfrac{\sigma}{7}\)(イ=⑦)の正規分布に近似的に従います。

\(\sigma\approx 4.0\) とすると、標準偏差は \(\dfrac{4.0}{7}\)。正規分布表から、95%を挟む幅は \(1.96\) 倍です。

\[28.6-1.96\times\frac{4.0}{7}\le m\le 28.6+1.96\times\frac{4.0}{7}\]

\(1.96\times\dfrac{4.0}{7}=1.96\times 0.5714\cdots=1.12\)。よって

\[27.48\le m\le 29.72\]

\[27.5\le m\le 29.7\]

(ウエ.オ=27.5、カキ.ク=29.7)

共通テストの空欄は小数第1位までなので、ここは四捨五入して答えます(\(27.48\to 27.5\)、\(29.72\to 29.7\))。

(2) K県の高校生の総数(ケコ)

−2.45−1.96−0.500.51.962.450.1915 × 2 = 0.3830(−0.5 ≦ Z ≦ 0.5 の面積)0.00710.0071両側で 0.0142 < 0.05
標準正規分布:|z|≧2.45 の両側(赤)。平均±0.5σ の面積は 0.1915×2=0.3830

\(X\) は平均30.0、標準偏差4.0。\(28.0\le X\le 32.0\) は、平均から±2.0分=±0.5σの範囲です。

正規分布表(\(0\le Z\le z_0\) の面積)で \(z_0=0.50\) は \(0.1915\)。両側で \(0.1915\times 2=0.3830\)。

総数を \(N\) 人とすると \(0.3830\,N=76600\)、\(N=200000\)。

およそ 20 万人(ケコ=20)

(2) 仮説検定の組み立て(サ〜セ)

A高校の母平均 \(m\) と、K県の平均30.0分に差があるかを調べます。「差がある」を示したいので、差がないを帰無仮説にします。

  • 帰無仮説:A高校の母平均は 30.0 分である(サ=①)
  • 対立仮説:A高校の母平均は 30.0 分ではない(シ=⑤)

帰無仮説が正しいとすると、\(\overline{X}\) は近似的に平均 30.0(ス=②)、標準偏差 \(\dfrac{4.0}{7}=\)\(\dfrac{4}{7}\)(セ=⑤)の正規分布に従い、

\[Z=\frac{\overline{X}-30.0}{\dfrac{4}{7}}\]

は標準正規分布に従います。

(2) \(Z\) の値と判定(ソタチツ・テ)

標本平均28.6から

\[z=\frac{28.6-30.0}{\dfrac{4}{7}}=\frac{-1.4\times 7}{4}=-2.45\]

対立仮説が「ではない」の両側検定なので、次の確率を求めます。

\[P(Z\le -|z|)+P(Z\ge |z|)=2\,P(Z\ge 2.45)\]

表から \(P(0\le Z\le 2.45)=0.4929\)。

\[2\times(0.5-0.4929)=0.0142\]

(ソタチツ=0.0142)

この確率 \(0.0142\) は有意水準 \(0.05\) より小さいので、帰無仮説は棄却されます。

A高校の母平均とK県の平均には 差があるといえる(テ=⓪)

ちなみに (1) の信頼区間 \(27.5\le m\le 29.7\) は 30.0 を含みません。信頼度95%の区間に30.0が入らないことと、有意水準5%で棄却されることは、同じことの言いかえです。

つまずきポイント

  1. 標準偏差を \(\sigma\) のままにする。 標本平均 \(\overline{X}\) の標準偏差は \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}=\dfrac{\sigma}{7}\)。\(X\) 自身の \(\sigma\) と区別する。
  2. 信頼区間の中心。 中心は母平均ではなく、標本から求めた平均 28.6。\(m\) は区間の中に入る未知の値。
  3. 1.96 を使う理由。 信頼度95%は、正規分布表で片側 0.475(\(P(0\le Z\le z)=0.475\))となる \(z=1.96\)。
  4. 両側検定の確率。 「ではない」は左右の裾を足す。\(P(Z\ge 2.45)\) だけを答えて、2倍を忘れない。
  5. 「差があるといえる」の読みちがい。 確率0.0142は有意水準0.05より小さいので棄却=差がある。「大きければ差があるとはいえない」と覚えちがえない。

要点まとめ

  1. 標本平均 \(\overline{X}\) は、平均 \(m\)、標準偏差 \(\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\) の正規分布に近似的に従う。
  2. 信頼度95%の信頼区間は \(\overline{X}\pm 1.96\times\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\)。ここでは \(27.5\le m\le 29.7\)。
  3. 正規分布表は「\(0\le Z\le z_0\) の面積」。平均±0.5σ は \(0.1915\times 2\)。
  4. 検定は、差がない(帰無仮説)と仮定して \(Z\) を作り、両側の確率と有意水準5%を比べる。\(z=-2.45\)、確率 \(0.0142\) → 差があるといえる。
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