数学Ⅲα【114】1+x ≦ eˣ を使い回す ― e^(−x²) の積分をはさむ

この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。

解説動画(音声つき)

\(e^{-x^{2}}\) の積分は、高校範囲では求まりません。 それでも値の範囲は決められます。使うのは \(1+x\le e^{x}\) というたった1本の不等式。これを2回使い回します。

この回で扱う問題(大阪教育大)

(1) すべての実数 \(x\) に対して,次の不等式を証明せよ。

(i) \(1+x\le e^{x}\)   (ii) \(1-x^{2}\le e^{-x^{2}}\le\dfrac{1}{1+x^{2}}\)

(2) 不等式 \(\displaystyle\frac{2}{3}<\int_{0}^{1}e^{-x^{2}}dx<\frac{\pi}{4}\) を証明せよ。

(1)(i) 差をとって増減表

\[f(x)=e^{x}-(1+x),\qquad f'(x)=e^{x}-1\]

\(f'(x)=0\) となるのは \(x=0\)。そこで最小になります。

\(x\)\(\cdots\)\(0\)\(\cdots\)
\(f'(x)\)\(-\)\(0\)\(+\)
\(f(x)\)\(0\)

最小値が \(f(0)=0\) なので、つねに \(f(x)\ge 0\)。

\[1+x\le e^{x}\quad(\text{すべての実数 }x)\]

(1)(ii) 同じ式に別のものを代入する

(i) はすべての実数で成り立ちます。だから \(x\) の場所に何を入れてもよい。 ここが発想のポイントです。

左側 ― \(x\) に \(-x^{2}\) を入れる

\[1+(-x^{2})\le e^{-x^{2}}\quad\Longrightarrow\quad 1-x^{2}\le e^{-x^{2}}\quad\cdots\text{①}\]

右側 ― \(x\) に \(x^{2}\) を入れる

\[1+x^{2}\le e^{x^{2}}\]

両辺は正なので、逆数をとると向きが変わります。

\[\frac{1}{1+x^{2}}\ge\frac{1}{e^{x^{2}}}=e^{-x^{2}} \quad\Longrightarrow\quad e^{-x^{2}}\le\frac{1}{1+x^{2}}\quad\cdots\text{②}\]

①と②を合わせて

\[1-x^{2}\le e^{-x^{2}}\le\frac{1}{1+x^{2}}\]

(2) 両端は計算できる

(1)(ii) の不等式で等号が成り立つのは \(x=0\) だけ。つねには成り立たないので、 \(\displaystyle\int_{0}^{1}\) をつけると \(<\) になります。

\[\int_{0}^{1}(1-x^{2})dx<\int_{0}^{1}e^{-x^{2}}dx<\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^{2}}\]

左端は多項式なのでそのまま。

\[\int_{0}^{1}(1-x^{2})dx=\left[x-\frac{1}{3}x^{3}\right]_{0}^{1}=\frac{2}{3}\]

右端は \(\bigcirc^{2}+\square^{2}\) 型。\(x=\tan\theta\) と置いて

\[\int_{0}^{1}\frac{dx}{1+x^{2}}=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}d\theta=\frac{\pi}{4}\]

\[\frac{2}{3}<\int_{0}^{1}e^{-x^{2}}dx<\frac{\pi}{4}\]

(\(\frac{2}{3}=0.666\cdots\)、\(\frac{\pi}{4}=0.785\cdots\)。 ちなみに真の値は \(0.7468\cdots\) で、たしかにこの間にあります。)

つまずきポイント

  1. (ii) を一から証明しようとする。 \(g(x)=e^{-x^{2}}-(1-x^{2})\) を微分しても示せますが遠回りです。 「(i) と形が似ている」→代入で使い回す、が出題意図です。
  2. 代入するものを取り違える。 左は \(-x^{2}\)、右は \(x^{2}\)。作りたい形から逆算して決めます。
  3. 逆数で向きを変え忘れる。 \(1+x^{2}\le e^{x^{2}}\) の逆数は \(\dfrac{1}{1+x^{2}}\ge e^{-x^{2}}\) です。
  4. \(\le\) のまま結論する。 等号がつねには成り立たないことを述べて \(<\) にします。

要点まとめ

  1. \(1+x\le e^{x}\) はすべての実数で成立。だから何を代入してもよい。
  2. 欲しい形から逆算して代入するものを決める。
  3. 正の数どうしの逆数は向きが変わる
  4. 積分できない関数も、計算できる関数ではさめば範囲が決まる。
板書 【114】(1) を利用して e^(−x²) をはさむ
板書 【114】(1) を利用して e^(−x²) をはさむ
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