数学Ⅲα【111】面積比較で不等式をつくる ― 長方形と見比べる

この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。

解説動画(音声つき)

不等式を「証明する」と聞くと身構えますが、 \(\displaystyle\int\frac{1}{x}dx\) の不等式は面積を見比べるだけで作れます。 そしてその1本を \(k=1,2,\dots,n\) で足すと、有名な \(\log(n+1)<\sum\frac{1}{k}\) が出てきます。

この回で扱う問題

(1) 自然数 \(k\) に対して,\(\displaystyle\int_{k}^{k+1}\frac{1}{x}dx<\frac{1}{k}\) を示せ。

(2) 自然数 \(n\) に対して,\(\displaystyle\log(n+1)<\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}\) を示せ。

(1) 面積で見る

\(\displaystyle\int_{k}^{k+1}\frac{1}{x}dx\) は、曲線 \(y=\dfrac{1}{x}\) と \(x\) 軸、 \(x=k\)、\(x=k+1\) で囲まれた部分の面積です。

いっぽう右辺の \(\dfrac{1}{k}\) は、横 \(1\)、縦 \(\dfrac{1}{k}\) の長方形の面積 \(\left(1\times\dfrac{1}{k}\right)\) と読めます。

\(y=\dfrac{1}{x}\) は減少関数なので、\(k\le x\le k+1\) では 曲線は高さ \(\dfrac{1}{k}\) よりにある。だから曲線の下の面積は長方形より小さい。

これで示せました。

\[\int_{k}^{k+1}\frac{1}{x}dx<\frac{1}{k}\quad\cdots\text{①}\]

式で書くとこうなる

図だけでは答案になりにくいので、同じことを不等式の言葉で書いておきます。

\(k\le x\le k+1\) のとき \(\dfrac{1}{x}\le\dfrac{1}{k}\) で、 等号は \(x=k\) のときだけ(つねには成り立たない)。よって

\[\int_{k}^{k+1}\frac{1}{x}dx<\int_{k}^{k+1}\frac{1}{k}dx =\frac{1}{k}\Big[x\Big]_{k}^{k+1}=\frac{1}{k}\]

「等号がつねには成り立たない」の一言が答案の要です。 \(f(x)\le g(x)\) を積分しただけでは \(\int f\le\int g\) までしか言えません。 どこか1点でも \(f等号が外れて厳密な不等号になる — ここを書かないと減点されます。

(2) ①を足し合わせる

示したい式に \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}\) があるので、 ①を \(k=1,2,\dots,n\) について足してみます。

\[\int_{1}^{2}\frac{dx}{x}+\int_{2}^{3}\frac{dx}{x}+\cdots+\int_{n}^{n+1}\frac{dx}{x} <\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}\]

左辺は区間がとなり合っているので、1本につながります

\[\int_{1}^{n+1}\frac{1}{x}dx=\Big[\log|x|\Big]_{1}^{n+1}=\log(n+1)\]

\[\log(n+1)<\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}\]

調和級数 \(\sum\dfrac{1}{k}\) が \(\log n\) より大きい、つまり いくらでも大きくなる(発散する)ことが、この1行から分かります。

つまずきポイント

  1. 長方形の縦を \(\frac{1}{k+1}\) にしてしまう。 上から押さえたいので、区間での最大値 \(\frac{1}{k}\) を使います。 \(\frac{1}{k+1}\) は最小値なので、下から押さえる別の不等式になります。
  2. \(\le\) のまま答えてしまう。 等号がつねには成り立たないことを述べて \(<\) にしてください。
  3. 足すときに区間がつながることを見落とす。 \(\int_1^2+\int_2^3+\cdots+\int_n^{n+1}=\int_1^{n+1}\) です。ここが山場です。
  4. \(\log(n+1)\) を \(\log n\) と書く。 上端は \(n+1\)。足した本数が \(n\) 本であることから確かめられます。

要点まとめ

  1. 定積分は面積。長方形と見比べれば不等式が作れる。
  2. 単調な関数なら、区間の端の値が上下の押さえになる。
  3. \(f\le g\) を積分するときは「等号がつねには成り立たない」と述べて \(<\) にする。
  4. となり合う区間の定積分は足すと1本になる。
板書 【111】面積比較で不等式をつくる/【112】はさむ
板書 【111】面積比較で不等式をつくる/【112】はさむ
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