
この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。
見た目はおそろしい漸化式ですが、正体はただの等比数列です。 カギは \(e^{x-t}=e^{x}\cdot e^{-t}\) と分けること。 これで \(e^{x}\) は積分の外に出て、残った積分はただの定数になります。 その定数に \(a_{n}\) と名前をつければ、もう数列の問題です。
この回で扱う問題(大阪府立大)
関数 \(f_{n}(x)\ (n=1,2,\cdots)\) を
\[f_{1}(x)=x,\qquad f_{n}(x)=x+\frac{e}{2}\int_{0}^{1}f_{n-1}(t)\,e^{\,x-t}\,dt\quad(n=2,3,\cdots)\]
によって定める。
(1) \(f_{2}(x)\) を求めよ。
(2) \(a_{n}=\displaystyle\int_{0}^{1}f_{n}(t)e^{-t}dt\) とおく。\(n\ge 2\) のとき、\(a_{n}\) を \(a_{n-1}\) で表せ。
(3) \(f_{n}(x)\) を求めよ。
方針 ― 積分変数は \(t\)。\(x\) は定数あつかい
\[e^{\,x-t}=e^{x}\cdot e^{-t}\]
\(\displaystyle\int_{0}^{1}\cdots dt\) の中で \(e^{x}\) はただの定数。前に出せます。
すると漸化式は
\[f_{n}(x)=x+\frac{e}{2}\,e^{x}\underbrace{\int_{0}^{1}f_{n-1}(t)e^{-t}dt}_{\textstyle =\,a_{n-1}} =x+\frac{a_{n-1}}{2}\,e^{\,x+1}\]
と書けてしまいます。関数の漸化式に見えたものが、数列 \(\{a_{n}\}\) の漸化式に化けました。
「積分の中に \(f_{n-1}\) が入っていて手が出ない」と思ったら、 積分の値は数(定数)だと思い出すこと。 定積分は \(t\) で積分しきってしまうので、\(t\) は消えて数だけが残ります。
まず土台の積分 ― \(\displaystyle\int_{0}^{1}te^{-t}dt\)
この先で何度も出てきます。部分積分で先に片づけておきます。
\[\int_{0}^{1}te^{-t}dt=\Big[-te^{-t}\Big]_{0}^{1}+\int_{0}^{1}e^{-t}dt =-\frac{1}{e}+\Big[-e^{-t}\Big]_{0}^{1}=-\frac{1}{e}+\left(-\frac{1}{e}+1\right)\]
\[\int_{0}^{1}te^{-t}dt=1-\frac{2}{e}\]
(1) \(f_{2}(x)\) を求める
\(f_{1}(t)=t\) なので
\[f_{2}(x)=x+\frac{e}{2}\int_{0}^{1}t\,e^{\,x-t}dt =x+\frac{e^{\,x+1}}{2}\int_{0}^{1}te^{-t}dt =x+\frac{e^{\,x+1}}{2}\left(1-\frac{2}{e}\right)\]
\(\dfrac{e^{\,x+1}}{2}=\dfrac{e}{2}e^{x}\) として整理すると
\[f_{2}(x)=x+\left(\frac{e}{2}-1\right)e^{x}\]
(2) \(a_{n}\) の漸化式をつくる
\(f_{n}(t)=t+\dfrac{a_{n-1}}{2}e^{\,t+1}\) を、\(a_{n}\) の定義に代入します。
\[a_{n}=\int_{0}^{1}\left(t+\frac{a_{n-1}}{2}e^{\,t+1}\right)e^{-t}dt =\int_{0}^{1}te^{-t}dt+\frac{a_{n-1}}{2}\,e\int_{0}^{1}dt\]
ここが気持ちのいいところ。\(e^{\,t+1}\cdot e^{-t}=e\) となって \(t\) が完全に消えます。 残るのは \(\displaystyle\int_{0}^{1}dt=1\) だけ。
\[a_{n}=\frac{e}{2}a_{n-1}+1-\frac{2}{e}\]
板書に書いたとおり、「単なる漸化式」になりました。
(3) 漸化式を解いて \(f_{n}(x)\) へ
\(a_{n}=pa_{n-1}+q\) 型なので、特性方程式 \(c=\dfrac{e}{2}c+1-\dfrac{2}{e}\) を解いて \(c=-\dfrac{2}{e}\)。 つまり両辺に \(\dfrac{2}{e}\) を足すと等比になります。
\[a_{n}+\frac{2}{e}=\frac{e}{2}\left(a_{n-1}+\frac{2}{e}\right)\]
初項は \(a_{1}=\displaystyle\int_{0}^{1}te^{-t}dt=1-\frac{2}{e}\) なので \(a_{1}+\dfrac{2}{e}=1\)。
\[a_{n}+\frac{2}{e}=1\cdot\left(\frac{e}{2}\right)^{n-1} \qquad\Longrightarrow\qquad a_{n}=\left(\frac{e}{2}\right)^{n-1}-\frac{2}{e}\]
これを \(f_{n}(x)=x+\dfrac{a_{n-1}}{2}e^{\,x+1}\) に戻します(\(n\ge 2\))。
\[f_{n}(x)=x+\frac{1}{2}\left\{\left(\frac{e}{2}\right)^{n-2}-\frac{2}{e}\right\}e\cdot e^{x} =x+\left\{\left(\frac{e}{2}\right)^{n-1}-1\right\}e^{x}\]
\(n=1\) を入れると \(x+(1-1)e^{x}=x\) となり、\(f_{1}(x)=x\) と一致します。
\[f_{n}(x)=x+\left\{\left(\frac{e}{2}\right)^{n-1}-1\right\}e^{x}\]
検算:\(n=2\) で \(x+\left(\dfrac{e}{2}-1\right)e^{x}\)。(1) と合っています。
つまずきポイント
- \(e^{\,x-t}\) を分けずに眺めてしまう。 \(e^{x}\cdot e^{-t}\) と分けて \(e^{x}\) を外に出す。これができるかどうかだけの問題です。
- 積分の中の \(f_{n-1}\) を「関数」のまま扱う。 \(\displaystyle\int_{0}^{1}\!\cdots dt\) は数。名前(\(a_{n-1}\))をつけた瞬間に数列になります。
- \(\displaystyle\int_{0}^{1}te^{-t}dt\) を毎回計算し直す。 最初に1回だけ求めて \(1-\dfrac{2}{e}\) と置いておく。時間が全然ちがいます。
- (3) で \(a_{n-1}\) と \(a_{n}\) を取りちがえる。 \(f_{n}\) に入るのは \(a_{n-1}\)。添字を1つずらすのを忘れると答えが \(\dfrac{e}{2}\) 倍ずれます。
- \(n=1\) で成り立つかを確かめない。 「この等式は \(n=1\) のときも成り立つ」の一言があるかどうかで答案の完成度が変わります。
要点まとめ
- \(e^{\,x-t}=e^{x}\cdot e^{-t}\)。\(x\) は前に出す、\(t\) のかたまりが定数。
- 定積分は数。名前をつければ関数の漸化式が数列の漸化式になる。
- \(\displaystyle\int_{0}^{1}te^{-t}dt=1-\dfrac{2}{e}\) を先に用意しておく。
- \(a_{n}=pa_{n-1}+q\) は特性方程式で等比数列に直す。
