
この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。
分数の和は、そのまま足しても答えにたどり着きません。 鍵は「差の形」。1つの項を \(f(k)-f(k+1)\) の形に書けば、 となり同士が次々に打ち消し合って、最初と最後だけが残ります。 差の形を作る道具が、有理化と部分分数分解です。
この回で扱う問題
次の和を求めよ。
(1) \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)\)
(2) \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{\sqrt{k}+\sqrt{k+1}}\)
(3) \(\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k(k+1)}\)
(1) 公式を知らなければ、具体化する
\(\displaystyle\sum\frac{1}{k}\) の公式はありません。こういうときは、項を書き並べてみます。
\[\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)
=\left(1-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right)+\cdots+\left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right)\]
\(-\frac{1}{2}\) と \(+\frac{1}{2}\)、\(-\frac{1}{3}\) と \(+\frac{1}{3}\)、…が次々に消えます。残るのは最初の \(1\) と最後の \(-\frac{1}{n+1}\) だけ。
\[\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)=1-\frac{1}{n+1}=\frac{n}{n+1}\]
(1) の式は、はじめから差の形 \(f(k)-f(k+1)\) になっていました。これが打ち消し合いの正体です。 (2)(3) は、差の形を自分で作る問題です。
(2) 有理化して差の形を作る
そのまま書き並べても \(\dfrac{1}{1+\sqrt{2}}+\dfrac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}}+\cdots\) で、何も消えません。 分母を有理化します。
\[\frac{1}{\sqrt{k}+\sqrt{k+1}}=\frac{\sqrt{k}-\sqrt{k+1}}{(\sqrt{k}+\sqrt{k+1})(\sqrt{k}-\sqrt{k+1})}\]
\[=\frac{\sqrt{k}-\sqrt{k+1}}{k-(k+1)}=-\left(\sqrt{k}-\sqrt{k+1}\right)\]
分母は \(k-(k+1)=-1\)。これで差の形になりました。
\[\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{\sqrt{k}+\sqrt{k+1}}=-\left\{\left(1-\sqrt{2}\right)+\left(\sqrt{2}-\sqrt{3}\right)+\cdots+\left(\sqrt{n}-\sqrt{n+1}\right)\right\}\]
\[=-\left(1-\sqrt{n+1}\right)\]
\[\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{\sqrt{k}+\sqrt{k+1}}=\sqrt{n+1}-1\]
分母が \(-1\) になるので、全体にマイナスがつきます。 最後に \(-(1-\sqrt{n+1})\) を \(\sqrt{n+1}-1\) と整理するところで符号を落としやすい。
(3) 部分分数分解で差の形を作る
\(\dfrac{1}{1\cdot 2}+\dfrac{1}{2\cdot 3}+\cdots\) と並べても消えません。 「差の形を作れないか?」と考えて、部分分数分解します。
基本の形(通分すると確かめられる)
\[\frac{1}{AB}=\frac{1}{B-A}\left(\frac{1}{A}-\frac{1}{B}\right)\]
\(A=k,\ B=k+1\) なら \(B-A=1\) なので、\(\dfrac{1}{k(k+1)}=\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}\)。
形を覚えていなくても作れる(恒等式の流れ)
\[\frac{1}{k(k+1)}=\frac{A}{k}-\frac{B}{k+1}\]
とおいて、\(A,\ B\) を見つけます。
① 両辺に \(k(k+1)\) を掛けて分母をはらう。
\[1=A(k+1)-Bk=(A-B)k+A\]
これはどんな \(k\) でも成り立つ式(\(k\) についての恒等式)です。
② 両辺の係数を比べる。\(k\) の係数は \(A-B=0\)、定数項は \(A=1\)。よって \(A=1,\ B=1\)。
\[\frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\]
これで (1) とまったく同じ差の形になりました。
\[\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k(k+1)}=\sum_{k=1}^{n}\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)=1-\frac{1}{n+1}=\frac{n}{n+1}\]
つまずきポイント
- \(\sum\frac{1}{k}\) を公式で計算しようとする。 そんな公式はありません。書き並べて、消える形を探します。
- 消え残りを読みちがえる。 残るのは最初の項の前半と最後の項の後半。途中は全部消えます。
- 有理化のあと、分母 \(-1\) を落とす。 \(k-(k+1)=-1\)。全体の符号が変わります。
- 部分分数分解の係数 \(\frac{1}{B-A}\) を忘れる。 \(\frac{1}{k(k+2)}\) なら \(B-A=2\) なので \(\frac{1}{2}\) がつきます。
要点まとめ
- 分数の和は、1つの項を差の形 \(f(k)-f(k+1)\) にすると打ち消し合う。
- 残るのは最初と最後だけ。迷ったら書き並べて確かめる。
- ルートの和は有理化、積の逆数は部分分数分解で差の形を作る。
- 部分分数分解は「とおく → 分母をはらう → 係数を比べる」の流れで作れる。
