
この問題の考え方を短い動画にまとめました。動画は問題の提示から始まります。 流れをつかんでから、下の解説を読んでください。
3乗根が2つ並んだ、見るからに手強い式。 でも \(x=A-B\) と1文字におくと、たった2つの材料 \(A^{3}-B^{3}\) と \(AB\) だけで3次方程式ができます。 最後は「\(x\) は実数」の一言で虚数解を切る。そこまでが証明です。
この回で扱う問題(東北大)
実数の間の等式
\[\sqrt[3]{5\sqrt{2}+7}-\sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}=2\qquad\cdots\cdots(*)\]
を以下の手順に従って示せ。
(1) 係数が整数である \(x\) の3次方程式で、 \(x=\sqrt[3]{5\sqrt{2}+7}-\sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}\) が解になるものを1つ求めよ。
(2) (1) で求めた3次方程式を解くことにより、等式 \((*)\) を証明せよ。
方針 ― 3乗根を消すには、3乗を想定する
\[A=\sqrt[3]{5\sqrt{2}+7},\qquad B=\sqrt[3]{5\sqrt{2}-7},\qquad x=A-B\]
とおきます。\(\sqrt[3]{\ }\) を外したいのだから、3乗して出てくる形を先に用意しておく。 用意するのは次の2つだけです。
\[A^{3}-B^{3}=(5\sqrt{2}+7)-(5\sqrt{2}-7)=14\]
\[AB=\sqrt[3]{(5\sqrt{2}+7)(5\sqrt{2}-7)}=\sqrt[3]{(5\sqrt{2})^{2}-7^{2}}=\sqrt[3]{50-49}=1\]
\(AB=1\) がこの問題のすべてです。 \(5\sqrt{2}\) と \(7\) は、和と差の積が \(50-49=1\) になるように選ばれています。 中が \(1\) だから3乗根が外れる。ここに気づけば、あとは計算です。
(1) \(x\) の3次方程式をつくる
3乗の差の因数分解から出発します。
\[A^{3}-B^{3}=(A-B)(A^{2}+AB+B^{2})\]
カッコの中を \(A-B\) と \(AB\) だけで書き直すのがポイント。
\[A^{2}+AB+B^{2}=(A-B)^{2}+3AB\]
(\((A-B)^{2}=A^{2}-2AB+B^{2}\) に \(3AB\) を足すと \(A^{2}+AB+B^{2}\)。)よって
\[A^{3}-B^{3}=(A-B)\left\{(A-B)^{2}+3AB\right\}=x(x^{2}+3\cdot 1)=x^{3}+3x\]
左辺は \(14\) でしたから
\[x^{3}+3x=14\qquad\Longrightarrow\qquad x^{3}+3x-14=0\]
係数は全部整数。これが求める3次方程式です。
別のやり方 ― そのまま3乗する
\(x=A-B\) をそのまま3乗しても同じ式になります。
\[x^{3}=(A-B)^{3}=A^{3}-B^{3}-3AB(A-B)=14-3\cdot 1\cdot x\]
こちらのほうが速い人も多いはず。\((A-B)^{3}\) の展開で \(-3AB(A-B)\) が出ることを覚えておきましょう。
(2) 解いて、実数解を1つに絞る
\(P(x)=x^{3}+3x-14\) とおくと
\[P(2)=8+6-14=0\]
なので \(P(x)\) は \(x-2\) を因数にもちます。割り算して
\[P(x)=(x-2)(x^{2}+2x+7)\]
\(x^{2}+2x+7=0\) の判別式は \(\dfrac{D}{4}=1-7=-6<0\) なので、解は
\[x=2,\qquad x=-1\pm\sqrt{6}\,i\]
ここで終わりではありません。 \(\sqrt[3]{5\sqrt{2}+7}-\sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}\) は実数です。 実数で、しかも \(x^{3}+3x-14=0\) の解。虚数解の2つは候補から外れるので、残るのは \(x=2\) だけ。
\[\sqrt[3]{5\sqrt{2}+7}-\sqrt[3]{5\sqrt{2}-7}=2\qquad \blacksquare\]
検算:\(5\sqrt{2}\fallingdotseq 7.07\) なので \(A\fallingdotseq\sqrt[3]{14.07}\fallingdotseq 2.41\)、\(B\fallingdotseq\sqrt[3]{0.07}\fallingdotseq 0.41\)。 差は \(2.00\)。合っています。
つまずきポイント
- 3乗根を数値で近似しようとする。 \(\sqrt[3]{5\sqrt2+7}\) の値そのものは求まりません。1文字におくのが唯一の入口です。
- \(A^{2}+AB+B^{2}\) をそのまま計算しようとする。 \((A-B)^{2}+3AB\) と書き直して、\(x\) と \(AB\) だけで表す。これが設計です。
- \(AB\) の計算で \((5\sqrt{2})^{2}=50\) を間違える。 \(5^{2}\times(\sqrt2)^{2}=25\times 2=50\)。ここを \(10\) などにすると \(AB=1\) になりません。
- \((A-B)^{3}\) の展開で \(-3AB(A-B)\) を落とす。 \((A-B)^{3}=A^{3}-3A^{2}B+3AB^{2}-B^{3}=A^{3}-B^{3}-3AB(A-B)\)。
- (2) で「\(x=2\) だから示された」と書いて終わる。 3次方程式の解は3つ。与式が実数だから虚数解は捨てられる、と書いて初めて証明になります。
要点まとめ
- 3乗根の差は \(x=A-B\) と1文字におく。
- 用意する材料は \(A^{3}-B^{3}\) と \(AB\) の2つだけ。
- \(A^{2}+AB+B^{2}=(A-B)^{2}+3AB\) で、\(x\) だけの式に落とす。
- 最後は「実数である」を根拠に、虚数解を切り捨てる。
